低温度差スターリングエンジの試作
1. 極低温度差スターリングエンジンの構造
スターリングエンジンの構造形式は、基本的には、α形、β形及びγ形の3種類があるが、ここでは、低温度差で作動可能な構造形式としてγ形を採用する。 特に、高温源と低温源との温度差が極めて低い熱源を利用するエンジンでは図示出力が極めて小さいので、エンジン摺動部の摩擦抵抗を可能な限り小さくすることが、極めて重要である。図1(a)及び(b)は、これらの点を考慮して設計・試作した極低温度差スターリングエンジンの構造であり、表1にその仕様を示す。ここで、受熱壁の直径φ100のものをD100(図1(a))、また受熱壁の直径φ250のものをD250(図1(b))と呼ぶことにする。そして、その主要部品は次の点に注意して設計されている。
(1)熱交換部
作動ガスの加熱及び冷却のための熱交換は、加熱壁と冷却壁とで行われる。加熱壁は熱の伝導を良くするため、厚さ0.3oの銅板を、一方冷却側は、冷却板に厚さ8oのアルミ合金を使用している。これは、出力ピストンや軸受スタンドの設置に対する強度的な配慮のためである。また再生器は、構造上これを組み込むスペースがないので、オリジナルの設計ではこれを設けないことにしているが、再生器は熱効率を上げるためには、重要な働きをする。そこで、ディスプレーサ本体にスチールウールを素材とした再生器を組み込んだものも試作した。
(2)出力ピストンとそのシリンダ
出力ピストンとシリンダとの間は無潤滑で、しかも十分な気密性が保持されていなければならない。このため材料の選定並びに形状等について、いろいろと検討した結果、ガラス製注射筒を流用することとした。
(3)ディスプレーサとそのシリンダ
ディスプレーサは、出力ピストンと約90°の位相差を持って、加熱側及び冷却側それぞれの空間の作動ガスを、相互に移動させるためのものであるので、断熱性と質量軽減とを考慮して発泡スチロールを使用している。さらにディスプレーサシリンダは、アクリル製の円筒を利用し、可視化されている。
(4)クランク軸とその軸受
腕、ピン部及び軸部から構成されるクランク軸は、ハンダ付けで組み立て加工を行うので、これを考慮して黄銅材を選択した。そして摩擦抵抗軽減のため、軸部及びピン部はなるべく細くする必要があるが、反面、強度的な点を考慮して、クランク軸部及びピン部の直径は、D100およびD250いずれに対しても、φ3.0oとし、軸受けはボールベアリングを使用している。
(5)その他の部品
はずみ車及び軸受スタンドは、いずれも加工の容易さ並びに軽量化という観点より、アルミ系合金を使用している。また連結棒は、テフロン製の板を用い、D100及びD250いずれの供試エンジンに対しても同じ寸法である。
図1 試作した極低温度差スターリングエンジン
D100
|
D250 | |
Stroke volume of Power piston (Bore×Stroke) |
1. 26cm3 (φ10mm×16mm) |
1. 47 cm3 (φ25mm×3mm) |
Stroke volume of displacer piston (Bore×Stroke) |
34. 8 cm3 (φ86mm×6mm) |
249 cm3 (φ230mm×6mm) |
Dead volume | 45.4 cm3 | 314 cm3 |
Compression ratio | 1.016 | 1.003 |
実験方法 | 実験結果 | 図面 |